環海航路絵巻 二巻
(環海航路絵巻)
(環海航路絵巻)
万延元年遣米使節の一行のうちの誰かが、旅中の情景を描いた絵巻。
使節は日米修好条約批准書の交換を目的に新見豊前守以下86名が派遣された。ハワイからサンフランシスコ、パナマを汽車で横切り、再び船でキューバ沖を経てワシントン、ニューヨークと渡ったことが手に取るように分かる絵巻となっている。帰路(下巻)は大西洋からアフリカ廻りでジャワ、ナンキンなどを経て浦賀着港までの航程が描かれる。日本への帰着の折り、大きく描かれた富士山が印象的である。
大統領との会見、批准書の交換などの場面はないが、日米両国旗を掲げたニューヨーク入りの馬車、各種西洋料理の図に異郷での歓迎ぶりが偲ばれる。
標題も内題もなく、筆写の署名もない。スケッチの筆の線が簡潔で美しく絵心を感じさせる。デフォルメされた蒸気機関車の場面などは絵本をみているようである。彩色は或いは帰国後施されたものかもしれないが、地名などの走り書きは順不同、不統一などもあり、スケッチは行く先々で描かれたことを窺わせる。
なお、標題は本学元教授故鮎澤信太郎氏により、随行した医師広瀬保庵の「環海航路新図」にちなみ名付けられたもの。